2009-10-03

AP-16

今日はAP-16のパンチ素描についてお話します。

まずは既出のAP-7Bの左パンチを見てください。






上体を引きながらパンチを繰り出していますね。

次に、今回のAP-16の右パンチ。





同じパンチでも、AP-7Bはのけぞりながらのパンチ、
AP16は上体をグッと前に押し出しながらパンチを出しています。

こういった描き分けが出来るのは、KKの身体感覚によるものではないかと思います。
アニメーターとしての観察眼というよりは、
実際にパンチを繰り出したときの、身体が覚えている、あの感じ。
若かりしころストリートファイトで相手を打ちのめしたときの、あの感じ(笑)。


さて、このAP16の素描動画ですが、踏み込みの絵を強調するために、
2枚目と5枚目に仕掛けがあることに気付きました。
順番に見ていきましょう。


1枚目。得意の肩越し睨み。指の輪っかが面白い。

2枚目。踏み込む直前にのけぞりアクション。
輪っか以外の指がピンと伸びているところにも注目。

3枚目。グッと前傾姿勢に入る。同時にヒジが上がる。

4枚目。いよいよパンチを繰り出します。
胸は開き、左肩上がり。


注目の5枚目。ここでもういちど反り気味になります。
フィニッシュ(6枚目)への最短コースをたどるのであれば、
ここは反らずに、前傾姿勢になると思うのですが。


フィニッシュ。


実写でパンチ映像を撮影して見比べてみなければ、
この動画の軌道が実際とどう違っているのかわかりませんが、
たぶん、2枚目と5枚目のポーズはあり得ないと思うのです。
パンチのスピードは遅くなるし。

アニメーションとして必要だったのでしょうか。
ということで、2枚目と5枚目を抜いて動かしてみましょう。





うん、十分いけますね。

スピード感はあるし、キマッています。


ではなぜ2枚目と5枚目にのけぞりポーズを入れたのでしょうか


KKアニメでは、フォルムのデフォルメと同時に、

動きにもデフォルメが加えられていることがよくあります。

パンチのパターンの描き分けが身体感覚によるものだとすれば、

こういった動きのデフォルメは、

アニメーターとしての職業的なクセから来ているのかもしれません。

「もっとハデに」「もっと力強く」見せたい、というクセですね。

だから、前に向かう動きをハデに見せるために、いったんのけぞってみたり、

最後のパンチを力強く、重たくするために、ちょっと反動をつけてみたりする。


たぶん、KKは無意識のうちにやっていると思いますが、

たとえば、これが通常のアニメーション作品の制作となると、

KKが描いた原画に、2枚目と5枚目のような中割りを入れる動画マンは

なかなかいないでしょうね。

そういう意味でも、アニメーターが全部一人で作る素描動画というのは、

作家のこだわりやクセを随所に発見できて、面白いと思うのです。

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